「お酒で恐怖記憶が増強される」というのは間違いでは – サイエンスニュース

 
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これは、期待したい。
環境汚染が著しい中国で、こういう試みをしてくれると、
お隣の日本に流れてくる有毒物、ひいては地球全体の環境に関しても改善されるわけだから。
 
 
 
にわかには信じがたい内容だ……。
アルコールが脳にどのような作用を及ぼすことで記憶が増強されるのか。
 
実験で、かごに入れたラットに電気ショックを与え、恐怖を学習させると、
かごに入れただけで、身をすくめて固まるようになる。
チームはいったん固まった直後のラットに飲酒相当のアルコールを注射した。
その結果、注射しないラットと比べると、かごの中で固まり続ける時間が長くなった。
その効果は2週間続き、記憶が強くなったと判断されたという。
 
 
松木教授らは、ラットをふだんの飼育環境と違う箱に移し、電気ショックを与えた。
いったん通常の飼育環境に戻し、翌日、恐怖を与えた箱に戻した。
ラットが箱の中でじっと動かない時間の長さから、「恐怖記憶」の度合いを測った。
再び箱に入れて恐怖記憶を呼び覚ましたラットを2グループに分け、
片方にアルコールを飲ませた。すると、酔ったラットは、しらふのグループより、
箱の中でじっとしている時間が長くなった。
思い出した恐怖記憶が、アルコールによって強められたと考えられるという。
 
記憶が増強された・・という考えは早計なんじゃないだろうか。
というより、この件に関しては、以下のように解釈すればすんなり理解できるように思う。
 
アルコールは脳の中枢神経の活動を抑制する性質がある。
これによって、大脳皮質の特に前頭前野などの領野は活動が抑制され、
それによって、普段はそれらの領野によって抑制的である領野、
つまり、大脳辺縁系、特に扁桃体などが優勢となり、
怒りや恐怖などの本能的反応を支配する領野が活発化する。
また、アルコールの摂取によって、記憶形成などのプロセスもその働きを妨げられる。
 
でだ、恐怖記憶の形成には2つのプロセスが存在し、
1つは扁桃体が主となって形成されるもの、
1つは海馬が主となって形成されるものである。
ここで、2つの恐怖記憶は性質が大きく異なるもので、
言ってみれば、海馬による恐怖記憶というのは、ある種のストレス・トラウマみたいなもので、
扁桃体による恐怖記憶というのは、原始的な恐怖感情を引き起こす類のものである。
 
そして、これが重要なのだけれど、扁桃体による恐怖記憶は原始的・本能的な反応なのに対して、
海馬による恐怖記憶は、自己の経験から形成されたものであり、
端的に言えば、ストレスに対応し順応できる記憶ということである。
 
つまり、何らかの諸事によって海馬で形成された恐怖記憶は、
その後、その諸事に反する事象が生じたとき、(恐怖は去ったと確信されるとき)
「恐怖を感じる必要はない」という別の記憶がそれに上書きされることで、
恐怖感情あるいはその諸事に対する何らかのストレス反応は無くなる。
 
 
ということはだ、アルコールの摂取によって恐怖が長く続いたのは、
ただたんに海馬の記憶形成プロセスがアルコールによって抑制的になっていただけなんじゃないのか。
それによって、恐怖記憶の上書きが行われにくくなったために、恐怖記憶が長く存在しただけなんじゃないか。
 
記憶増強ではなくて、ただたんにそのプロセスの問題だと思うんだけどなあ。
 
で、ふと思ったんだけど、毎日新聞の記事ではかなりニュアンスが異なっている。
というか、毎日新聞の記事内容ならば、まだ納得できる。
 
松木教授は「記憶は、獲得後にいったん固定され、また思い出して不安定な状態になった後、
再び固定されるという過程を繰り返し、徐々に薄まる。(深酒のときの記憶があいまいなように)
記憶獲得時のアルコールは獲得を阻害する働きがあるが、再固定ではアルコールに逆の効果が
あったため驚いた。嫌なことを忘れるためには、酒を飲まずに楽しい記憶で上書きする方が
よいのかもしれない」と話す。
 
なるほど、この内容なら非常に納得がいくし、理解できる。
 
しかし、河北新報や読売新聞の記事内容と、毎日新聞のそれとはかなり意味が違う。
こうなると……松木教授の論文を直接参照するしかないのだけれど……
 
個人的には、河北新報や読売新聞の記者が勘違い、
あるいは記事をよりセンセーショナルにしようとしたために、
ニュアンスが大きく異なるものとなってしまったのではないかと思う。
 
そして、記事中に「記憶獲得時のアルコールは獲得を阻害する働きがあるが、
再固定ではアルコールに逆の効果があったため驚いた。」とあるが、
恐怖記憶の形成プロセスと脳におけるアルコールの作用を考えれば、
なんら矛盾点はなく、順当に解釈できると思うのだけれどどうなんだろうか。
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