書籍紹介:数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター

小島 寛之:数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書 394).NHK出版新書,2012/12.

目次

第1章 数学でマネーを稼ぐ人たち―ギャンブルからアルゴトレーディングまで
第2章 数学的推論とは何か―トレーディングを支える原理
第3章 コンピューターにできること・できないこと
第4章 「正しい」とはどういうことか―「可能世界」から考える
第5章 「知っていること」を知っている―ゲーム理論の推論
第6章 なぜリスクを根絶できないのか―「不完全性定理」から考える
第7章 金融バトルを解きあかす―「新しい推論」は何をもたらすか

商品紹介(Amazonより)

内容紹介
ITビジネスから金融市場まで、人はいかにハラを探り合うのか? 「数学的推論」とは何か? それは経験則でも山勘でもなく、数理論理学やゲーム理論をベースに次の一手を読む技術。コンピューター同士の推論合戦が本格化しつつある現在、それは巨額の利益とも結びつく一方で、大きなリスクをも引き起こす。日常の行動から経済情勢まで、今世紀をエキサイティングに変える、数学的推論の可能性と限界に迫る。
内容(「BOOK」データベースより)
「数学的推論」とは何か。それは経験則でも山勘でもなく、数理論理学やゲーム理論をベースに「相手のハラを探る技術」。人間のみならずコンピューター同士の推論合戦が本格化しつつある現在、それは巨額の利益と結びつく一方で、大きなリスクをも引き起こす。人間の行動から経済情勢まで、今世紀をエキサイティングに変える数学的推論。フォン・ノイマンやゲーデルなどの成果を踏まえ、その可能性と限界に迫る。

あーだこーだ書こうと思ったら,Amazonレビューで凄い的確なレビューがいっぱいあって,
僕なんかが色々と書評を書くのも馬鹿馬鹿しい……なんて思ってしまったので,
小難しい書評はAmazonのレビューに委ねる事にする.是非,読んでみて欲しい.
「本書はまず数理論理学の基本的な部分から説き起こし、可能世界・様相論理、ゲーム理論、不完全性定理、クリプキモデル等の道具立てを説明して、通貨攻撃の解読に至ります。(一部引用)」
とレビューを書かれている方のこのレビュー,非常に参考になる.

それはさておいて,僕も簡単に書評させてもらうと.
まず,本書の最後に書かれている,主要な論点のまとめが以下になる.

*現在の金融取引(ストックの売買)には、経済情勢や他のトレーダーの行動に関する推論が重要になる。
*現在の金融取引(ストックの売買)には、コンピュータによるアルゴトレーディングが重大な役割を担っている。
*コンピューターでの金融取引には、推論は数学的推論に限定される。
*数学的推論とは、数理理論(自然演繹)であり、数学において詳細に研究されている。
*推論には普遍的な意味での完全性と、個別的な意味での不完全性がある。それはコンピューターの限界をも規定している。
*金融リスクについても、類似の不完全性が存在するに違いない。
*数学的推論より人間のものに近づけるには、様相理論という新しい論理学が有望である。
*経済活動は、ゲームだと見なせる。ゲームの結末(均衡)には、相互推論が本質的に関与する。相互推論は様相理論の一種である。
小島 寛之:数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書 394).NHK出版新書,2012/12. 第7章p.p.229-230より引用)

まあ,こういう感じの内容の本になる訳ですが.

金融の話というと,数理ファイナンス,経済物理学,金融工学,行動ファイナンスといった,
ブラック・ショールズモデルだの,CAPMだの,VaRだの,ベキ分布だの,フラクタルだの,
期待効用理論だの,プロスペクト理論だの,事例ベース意思決定理論だの,
そういう話をよく目にすると思う.

でも,この本はそういう話は一切出て来ない.

もっと,論理学的な,数学哲学的な話に終始している感じ.
ゲーム理論の話は出てくるけども,それも,数学パズルのような,
数理論理を学ぶためのお話という側面が強いように感じる.
ゲーム理論を学ぶ,のではなくて,その話から,数学的センスを,
数学的なイメージを養っていくのがメインかのような.

本書は数学ミステリー小説のような感じがあって,数理論理の難解なミステリーを,
簡単な論理の話から,ゲーム理論の話まで順を追って謎を解いていき,
最終的に「通貨攻撃」という犯人を見つけるという壮大な物語なんだけど,
それは置いておいても,日頃忘れがちな,金融,コンピュータ,日常の中に様々にある
数理論理的側面に思いを馳せながら,数学的イメージを養わせてくれるような本.

じっくり読んで,数学ミステリーを読み解くのも面白いんだろうけど,
漠然と読み耽りつつ,数学的イメージを膨らませて読むのも面白い一冊だと思う.

失われつつある数学的センス,忘れかけた数学的イメージ,
今一度,養って復活させるために,お薦めの一冊かなと.

「通貨攻撃」の話を読み解こうと思うと,かなり難解なんだけど,
そういう読み方をする分には,非常に読み易い文庫本だと思うよ.


小島 寛之:数学的推論が世界を変える―金融・ゲーム・コンピューター (NHK出版新書 394).NHK出版新書,2012/12.

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