三中信宏:みなか先生といっしょに統計学の王国を歩いてみよう

三中信宏:みなか先生といっしょに統計学の王国を歩いてみよう

分かり易い様で,曖昧さが残っているというか,
これじゃ多分,分かった気になるだけで入門にも達していない.
数式を極力無くすという事は,それだけテクニカルに説明する事が要求される訳で.

1章は割と良かったけど,2章以降はこれでは何も学べない.
それに,視覚的に学べた方が後々しっかりとしたイメージが定着し,
悩む事もなくなるので,十分にスキーム化された本の方が望ましい.
例えば,ANOVAの説明.要因効果の検定について,
「シグナルがノイズよりも十分に大きい事を調べる方法」とある.
その説明は一理あるが,それでイメージが掴める人は初心者じゃないだろう.
そして,かなり語弊がある説明でもある.
というのは,この書き方だと,「信号」と「誤差」という枠組みで捉えてしまうが,
みているのは総平均に対してあくまで,
「要因に起因する誤差(=つまり要因による主効果≡シグナル)」と
「要因に起因しない誤差(=ホワイトノイズ≡ノイズ)」という話.
ホワイトノイズを仮定する事で,パラメトリックなメソッド
が可能になるという説明も欲しいが,この辺は文字で
云われるより図で示された方が遥かに分かり易い.
そして,その方が「できること」と「できないこと」もよく分かる.
例えば,交互作用.図でみれば一目瞭然で,
単に平均を繋ぐ線が交差するかどうかをみている.
それで分かるのは,複数の要因が複合して効果がある可能性(効果があるとは云っていない).
効果量について説明されるものでもなければ,それ以上の情報を与えるものではない.
だから,交互作用がある=複合効果がある,という議論はおかしいし,
一方で,交互作用がある=主効果の議論は意味がない,も少し尤もらしくない.
要は「要因が複合的な作用を及ぼしている可能性に留意して議論するべきだよね」
位の捉え方,イメージを持つのが尤もらしい議論だろう.
これはまあ,かなり話が逸れたけども.

何にせよ,推測統計,検定というのは,どの様な仮定を置くか,前提となる条件,
全体に対しての『デザイン』が議論に於いて最も大事な部分で,
それはやはり,頭の中で数理的な記述を於いて行える人というのは中々いなくて,
ビジュアライゼーションされたイメージがベースにあってこそだと思うので,
その辺を大事にした入門書(寧ろ専門書でも)がもっとあればいいのにと思う.
その意味では,「統計学の図鑑」とか,こういう本の方が万人に役に立つ.
折角,前章でボックスプロットやインデックスプロットの説明をしているのだから,
それを用いながら後続の章でも説明していたら割と良い本だったと思うが.

Newton:統計と確率ケーススタディ30-基礎知識と実践的な分析手法

カテゴリー: パーマリンク